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居住用財産を譲渡した場合の税制上の特典について-その2

今回も前回に引き続き、居住用財産を譲渡した場合の特例についてご紹介させていただきます。前回の投稿につきましては、以下をご参照ください。

居住用財産を譲渡した場合の税制上の特典について-その1

なお、今回ご紹介する特例は、現行法上、令和3年12月31日までに行われた譲渡に関して適用される規定となります。

4.特定の居住用財産の買換え特例

居住用財産を譲渡しただけでなく、新たに居住用財産を取得した場合に適用できる特例となります。譲渡益が生じた場合であってもその全額または一定額を限度として課税されません。

本特例は、譲渡資産、買換資産について以下に掲げる要件が付されています。譲渡資産に関する要件は、居住用財産を譲渡した場合の特別控除(3,000万円控除)にはなかった要件となります。

譲渡資産の要件
  1. 譲渡日の属する年の1月1日における所有期間が10年超であること
  2. 居住の用に供している期間が10年以上であること
  3. 譲渡対価の額が1億円以下であること 等
買換資産の要件
  1. 家屋(居住用部分に限ります)の床面積が50㎡以上、敷地面積が500㎡以下であること
  2. 譲渡日の属する年の前年1月1日から譲渡日の属する年の翌年12月31日までに取得をし、かつ、当該取得日の属する年の翌年12月31日までの間に居住の用に供する(見込みである)こと 等

本特例の適用を受ける場合の課税関係は以下のとおりです。

譲渡対価の額≦買換資産の取得価額の場合

資産の譲渡はなかったものとされます。つまり、譲渡益が発生していたとしてもこの段階では課税されません。

譲渡対価>買換資産の取得価額の場合

買換資産の取得価額を超える金額に対応する部分のみ譲渡があったものとされます。仮に、譲渡対価の額が8,000万円、譲渡資産の取得費・譲渡費用の額が3,000万円、買換資産の取得価額が6,000万円であった場合、以下のように計算されます。

譲渡益として認識する金額:

   2,000万円(注)△{3,000万円×2,000万円(注)/8,000万円}=1,250万円

     (注)譲渡対価のうち買換資産の取得価額を超える金額:8,000万円△6,000万円=2,000万円

つまり、全体の譲渡益5,000万円のうち、買換資産の取得価額以下の金額に対応する部分(6,000万円△{3,000万円×6,000万円/8,000万円}=3,750万円)については譲渡がなかったものとされ、この段階では課税されません。あくまで買換資産の取得価額を超える金額に対応する部分のみ譲渡が認識されます。

本特例は、居住用財産を譲渡した場合の特別控除(3,000万円控除)とは選択適用となりますので、いずれの要件も満たす場合にはどちらを選択するか検討する必要があります。

本特例の適用を受ける場合、軽減税率の特例(譲渡所得のうち6,000万円以下の金額について所得税等10.21%、住民税4%が適用されるもの)の適用を受けることはできず、所得税等15.315%、住民税5%による原則的課税がなされます。また、本特例の適用により譲渡がなかったとされる部分については、買換資産の取得費は譲渡資産の取得費を引き継ぐこととされ、将来、当該買換資産を譲渡することとなった際に、本特例の適用により実現しなかった譲渡益が実現することとなります。

選択適用に際してはこれらを総合勘案する必要がありますが、一般的には、譲渡益が3,000万円以下の場合は居住用財産を譲渡した場合の特別控除(3,000万円控除)を選択し、譲渡益が3,000万円を超える場合は状況に応じて判断するといった対応になろうかと思われます。

居住用財産の譲渡により譲渡損が生じた場合の特例

土地建物等の譲渡により譲渡損が生じた場合、原則として、他の事業所得や給与所得等との損益通算はできませんが、所定の要件を満たす居住用財産の譲渡により生じた譲渡損については、損益通算および3年間の譲渡損失の繰越控除が適用できます。譲渡益が生じた場合には、何となく確定申告しなければならないかな?という発想が生まれますが、譲渡損の場合は失念しやすいところとなりますので、注意が必要です。

1.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除

本特例は、居住用財産を買換えた際に譲渡損が生じたケースとなります。譲渡資産、買換資産の主な要件は以下のとおりです。

譲渡資産の要件

譲渡日の属する年の1月1日における所有期間が5年を超えること

買換資産の要件
  1. 家屋(居住用部分に限ります)の床面積が50㎡以上であること
  2. 譲渡日の属する年の前年1月1日から譲渡日の属する年の翌年12月31日までに取得をし、かつ、当該取得日の属する年の翌年12月31日までの間に居住の用に供する(見込みである)こと
  3. 取得日の属する年の12月31日において、買換資産に係る住宅借入金等(償還期間が10年以上であるもの。)があること 等

損益通算してもなお通算しきれなかった損失の金額がある場合には、3年間の譲渡損失の繰越控除が認められますが、繰越控除を行う年において、①12月31日現在買換資産に係る住宅借入金等(償還期間が10年以上であるもの。)があること、②その年の合計所得金額が3,000万円以下であること、の要件を満たす必要があります。

買換資産に係る住宅借入金等については、住宅ローン控除の併用が可能です。

2.特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除

本特例は、住宅ローン完済前の居住用財産を譲渡した際に譲渡損が生じたケースとなります。①譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産であること、②譲渡契約締結日の前日に譲渡資産に係る住宅借入金等があることが主な要件とされます。

損益通算の対象とされる金額は譲渡損の金額ではなく、譲渡損の金額のうち、住宅借入金等の残高から譲渡対価を控除した金額が限度とされます。譲渡損が発生したとしても、譲渡対価の額で住宅ローンの返済を賄える場合には、この特例を適用することはできません。

本特例も3年間の譲渡損失の繰越控除が認められますが、繰越控除を行う年において、合計所得金額が3,000万円以下であることが要件とされます。

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居住用財産を譲渡した場合の税制上の特典について-その1

確定申告の時期ですので、今回も個人所得税に関する取扱いより、「居住用財産を譲渡した場合の税制上の特典」について、ご紹介させていただきます。

居住用財産については、その方の生活の拠点でもあることから、その取得、譲渡に際して様々な税制上の特典が認められています。今回と次回は「譲渡」の場合の特典についてご紹介させていただき、続いて「取得」の場合の特典についてご紹介させていただきます。

まずは、土地建物等の譲渡があった場合の所得税の一般的な取扱いについて整理します。土地建物等の譲渡については分離課税として取扱われ、事業所得や給与所得等とは別個に税額の計算が行われます。

譲渡所得に関する一般的な取扱い

土地建物等の譲渡に係る税額は、以下の計算式により算出されます。

譲渡所得に係る税額={譲渡対価△(譲渡資産の取得費(注1)+譲渡費用)△特別控除額(注2)}×税率(注3)

(注1)譲渡資産の取得費・・・当該資産の取得に要した金額から譲渡時までの減価償却費(事業の用に供していなくても一定の減価が可能)を控除した金額

(注2)特別控除額・・・特例の要件を満たすもののみ控除可能。通常の譲渡では特別控除なし。

(注3)税率・・・譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの(長期譲渡所得)と、5年以下のもの(短期譲渡所得)に区分し、それぞれ以下の税率により課税

  長期譲渡所得・・・所得税15.315%(復興特別所得税含む)、住民税5%

  短期譲渡所得・・・所得税30.63%(復興特別所得税含む)、住民税9%

土地建物等の譲渡により譲渡損が生じた場合、同一年中に他の土地建物等の譲渡による譲渡益が生じた場合には、当該譲渡益との通算は可能ですが、なお通算しきれなかった損失の金額があったとしても、他の事業所得や給与所得等との損益通算はできません。

居住用財産の譲渡により譲渡益が生じた場合の特例

1.居住用財産を譲渡した場合の特別控除(3,000万円特別控除)

居住用財産の譲渡により譲渡益が生じた場合、3,000万円の特別控除が認められています。生活の本拠として使用されてさえいれば、所有期間に関する要件はありません。ただし、譲渡先が親族となる場合、建物を取り壊した後に土地のみを譲渡する場合、居住しなくなった後一定期間の間に譲渡する場合等には適用が制限されることがありますので、注意が必要となります。

数年前に購入した居住用財産を譲渡する場合において多額の譲渡益を計上するケースはあまり考えにくいところですが、相続により取得した後住み続けた家を譲渡する場合、その取得価額は亡くなられた被相続人が購入された価額を引き継ぐこととなりますので、譲渡益が多額となる可能性があります。その場合は、この規定の適用が有効となります。

なお、前年または前々年に譲渡した別の居住用財産について、①既にこの規定の適用を受けている場合、後述する②「特定の居住用財産の買換え(交換)の特例」、③「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」、④「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除」の適用を受けている場合は、この規定の適用を受けることはできません。譲渡した年において、②「特定の居住用財産の買換え(交換)の特例」との併用もできません。

また、新たに購入した居住用財産について住宅ローン控除の適用を受ける場合についても、併用防止の措置が採られていますので、注意が必要となります。

2.被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特別控除(3,000万円特別控除)

相続または遺贈により、被相続人が居住の用に供していた家屋およびその敷地等を取得した個人が、平成28年4月1日から令和5年3月31日までにその家屋または敷地等を譲渡した場合、上記居住用財産の譲渡に該当するものとみなされ、3,000万円の特別控除が認められます。

敷地の単独譲渡であっても、一定の要件を満たす場合には、この規定の適用が可能です。したがって、遠方にて1人でお住まいだった父または母がお亡くなりになり、その家屋および敷地を相続したものの住む予定もない場合、家屋を取り壊して譲渡してしまうケースがありますが、その場合にもこの規定は有効となります。

以下、家屋と敷地の譲渡、家屋取り壊し後の敷地の単独譲渡に分けて、要件を記載させていただきます。

被相続人居住用家屋とともにその敷地等を譲渡する場合
  1. 相続開始後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にされた譲渡であること
  2. 譲渡対価の額が1億円を超えないこと
  3. 譲渡した家屋が①昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、②区分所有登記された家屋でなく、かつ、③相続開始の直前において、その被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  4. 譲渡した家屋が、相続時から譲渡時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
  5. 譲渡した家屋が、譲渡時において、地震に対する安全性に係る規定または基準として一定のものに該当するものであること
被相続人居住用家屋を取り壊してその敷地のみを譲渡する場合
  1. 相続開始後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にされた譲渡であること
  2. 譲渡対価の額が1億円を超えないこと
  3. 相続により取得した家屋が①昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、②区分所有登記された家屋でなく、かつ、③相続開始の直前において、その被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  4. 相続により取得した家屋が、相続時から取り壊し等の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
  5. 譲渡した土地が、家屋の取り壊し等の時から譲渡時まで、建物または構築物の敷地に用に供されていたことがないこと

上記のとおり、対象となる家屋は昭和56年5月31日以前に建築されたものとなりますので、相当築年数を経過したものとなります。家屋と敷地を同時に譲渡する場合は、家屋について耐震リフォーム等の対応が要件とされ、敷地の単独譲渡の場合は、家屋の取り壊しが要件とされます。相続時以降、何の用途にも供されていない、いわゆる空き家であったことも要件とされます。

また、本規定は、空き家対策を目的としているため、区分所有登記された家屋は対象となりません。したがって、マンションは対象外となります。

本規定の適用にあたっては、被相続人が居住用として使用していたことを証明するため、市区町村長より交付を受けた「確認書」を確定申告書に添付する必要があります。まずは所定の書類を添付したうえで「確認申請書」を市区長村に提出する必要がありますが、「確認書」の交付まで時間を要することとなりますので、要件を満たす場合には、早めに市区町村への手続きが必要となります。

3.居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

譲渡した居住用財産が、譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産である場合、譲渡所得金額のうち6,000万円に達するまでの金額については、所得税10.21%、住民税4%という軽減税率が適用されます。

本規定は、上記3,000万円特別控除との併用が可能となりますので、譲渡益から3,000万円を控除した後の長期譲渡所得金額に対して本軽減税率が適用されることとなります。

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上場株式等の配当等は確定申告した方が良いのか

通常であれば、確定申告も完了している時期となりますが、昨今のコロナの状況も踏まえ、本年の確定申告も期限が延長されています。今回は、確定申告で注意しなければならない点として、上場株式等の配当等に係る確定申告の要否について記載させていただきます。

上場株式等の配当等については、特に税理士に依頼することもなくご自分で確定申告されるケースが多いと考えます。しかしながら、間違えやすい論点も多いところとなりますので(実際に間違えたという方も多く聞きます。)、ご注意ください。

特定口座にて上場株式等の運用をする場合、「源泉徴収あり」か「源泉徴収なし」を選択することとなります。「源泉徴収なし」を選択した場合、原則として自分で確定申告をする必要がありますが、「源泉徴収あり」を選択した場合、原則として確定申告する必要はありません。所得税15.315%(復興特別所得税含む)、住民税5%がすでに徴収されているためです。確定申告が強制されるという点で、多くの方々は「源泉徴収あり」の口座を選択されているのではないでしょうか。

しかしながら、「源泉徴収あり」の口座を選択している場合でも、確定申告をした方が良いというケースもあります。以下、確定申告をした方が良い一般的なケースとして3点取り上げてみます。

確定申告をした方が良い場合

特定口座において運用損が生じている場合

確定申告を行うことにより、運用損(譲渡損失>配当のケースをいいます。)を翌年以後3年間繰り越すことができます。翌年に運用益(譲渡損失<配当あるいは譲渡利益が出た等のケースをいいます。)が生じた場合、証券会社において暦年ベースでの正しい源泉徴収が行われますが、翌年にも確定申告を行うことにより、源泉徴収された税額を取り戻すことが可能となります。

複数の特定口座を保有しており、一方の口座で運用損、一方の口座で運用益が生じている場合

確定申告を行うことにより、複数口座における運用損と運用益を通算することができます。つまり、運用益が生じた口座において源泉徴収されている税額を確定申告により取り戻すことができます。また、口座間で通算してもなお通算しきれなかった金額がある場合には、翌年以後3年間繰り越すことができます。

源泉徴収税率15.315%と確定申告により適用される税率の差額を享受する場合

上場株式等の配当等を「総合課税」として申告することとなります。「総合課税」は超過累進税率となり、また「配当控除」の適用を受けることができますので、源泉徴収税率15.315%との差額分を取り戻すことができます。一般に、課税所得金額が900万円以下であれば「総合課税」選択のメリットがあるとされますので、運用益が生じている場合は、選択の余地があるのではと考えられます。(※前年以前に生じた譲渡損失の繰越控除を行う場合は、「申告分離課税」を選択する必要があります。)

ただし、「総合課税」を選択することができるのは、上場株式等の配当等のうち特定上場株式等の配当等とされます。「特定」か「それ以外」かは年間取引報告書において区分表記されています。公社債などが「特定」から除外されています。

あえて確定申告をしない方が良い場合

上記において確定申告をした方が良いケースを取り上げましたが、上記に該当する場合であっても、あえて確定申告をせず、源泉徴収のみで完結させた方が良いというケースもあります。それは、各種税制上のメリットを享受するうえで、「合計所得金額」という判定要素が取り入れられることがあるためです。

「合計所得金額」とは、上場株式等の配当等に関していうと、同一年分の損益通算後、譲渡損失の繰越がある場合は繰越控除前、の金額となります。確定申告を行わなければ、上場株式等の配当等は「合計所得金額」に算入されることはありません。損益通算、繰越控除に目を奪われて確定申告を行うことにより、他の税制上のメリットを享受できず、結果的に損をしてしまうということが起こりえます。

「合計所得金額」を指標とするものとして、一般に以下のものが挙げられます。

配偶者控除、扶養控除

扶養する者の「合計所得金額」が1,000万円以下、配偶者、扶養される者の「合計所得金額」が48万円以下であることが要件とされます。仮に、配偶者が前年の確定申告で譲渡損失の繰越を100万円行い、当年に運用益が50万円出たため、譲渡損失の繰越控除を行う場合、「合計所得金額」は50万円(他に所得があればその所得も加算)となり、扶養する側で配偶者控除が適用できません。

この場合、配偶者側では運用益に対する源泉所得税を取り戻すことができますが、扶養する側においての税制上のメリットが失われます。双方を考慮したうえで確定申告するかしないかの判断が必要となります。

基礎控除

合計所得金額が2,500万円以下(2,400万円を超えると控除額が段階的に縮小)であることが要件とされます。この程度の所得になると超過累進税率により所得税率が40.84%になることが想定されますので、基礎控除48万円の適用があるかないかは結構なインパクトとなります。

他規定における「合計所得金額」要件

居住用財産の譲渡損失の繰越控除・・・合計所得金額が3,000万円以下

住宅ローン控除・・・合計所得金額が3,000万円以下

住宅取得資金の贈与・・・合計所得金額が2,000万円以下

教育資金、結婚・子育て資金の贈与・・・合計所得金額が1,000万円以下 等々・・・

確定申告をしただけではダメな場合

確定申告のデメリットも考慮したうえで確定申告を行った場合であっても、他に留意しなければならない点があります。

「総合課税」による確定申告を行った場合

「総合課税」による確定申告を行うのは、配当控除も踏まえ、所得税率の差額分を享受することにあります。しかしながら、「総合課税」による確定申告を行った場合、何も手続きをしなければ住民税は10%の税率で課税されます。住民税にも配当控除がありますが、それでも少なくとも7.2%の税率で課税されます。源泉徴収された税率が5%ですので、確定申告により、住民税の負担は上がってしまうことになります。

一方で、上場株式等の配当等については、住民税の計算上、所得税の計算と異なる課税方法を選択することができます。所得税の確定申告を行った後に住民税の申告も行う必要があり、手続き上、手間は増えますが、所得税、住民税それぞれにおいて税負担額を最少に抑えることが可能となります。

本ケースにおいては、所得税では確定申告を行って所得税の負担を最少にし、住民税では「申告不要」を選択することが選択肢として挙げられます。確定申告のほか、別途、住民税の申告を行う必要がありますが、住民税は源泉徴収された5%の税負担のままとすることが可能です。

「総合課税」「申告分離課税」いずれの形式であっても確定申告を行った場合

「総合課税」を行った場合、上場株式等の配当等の金額が住民税の課税標準を構成します。また、「申告分離課税」を行った場合、一般に、「申告分離課税」を選択するということは損益通算、譲渡損失の繰越控除が狙いとしてあると考えられますので、損益通算後の金額、譲渡損失繰越控除適用後の金額が住民税の課税標準を構成します。

「総合課税」を行うケースは一般に所得税率の差額分のメリットを享受することにありますので、住民税の計算上は「申告不要」を選択したほうが良いというのは先ほど述べました。それでは、「申告分離課税」を選択した場合はどうでしょうか。

住民税の課税標準を指標とするケースは様々なものがあります。代表的なものとして、自営業者や引退世代等社会保険に加入していない方が加入する国民健康保険は住民税の課税標準を基礎として算定されます。また、学校教育における助成金(高等学校就学支援金等)、児童手当、最近ではコロナ関係の措置も住民税の課税標準をもとに給付対象者が決定されます。

確定申告を行い、その後何もしないとそれが住民税の計算上も反映されます。所得税の計算上は、確かに損益通算、譲渡損失の繰越控除は大きなメリットとなりますが、損益通算、繰越控除適用後にも所得が生じている場合、住民税だけであれば問題とはなりませんが(「申告分離課税」は住民税の税率が5%のため)、国民健康保険も含めた様々な論点に影響が及ぶ可能性があります。

本ケースにおいては、損益通算、譲渡損失の繰越控除を適用することによる住民税の負担減と他の論点を考慮したうえで、住民税の申告は行わず「申告分離課税」のままとするか、住民税の申告を行って「申告不要」とするかの検討が必要となります。

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遺留分制度の改正点

前回の投稿より、かなりの日数を要してしまいましたが、決して眠っていたわけではありません。。

気を取り直して、前回の続きとして、遺留分制度の改正点を記載させていただきます。前回の投稿は「遺留分の基本的考え方」をご参照ください。

遺留分権利者が有する権利の金銭債権化

改正前民法においては、遺留分権利者が権利を行使すると、物権的効果が生じ、遺留分を侵害する遺贈または贈与の一部が当然に無効となり、遺贈等の目的財産が遺留分権利者と遺贈等を受けた者の共有になるとされていました。

その結果、被相続人が後継者に対して自社株式や事業用資産の生前贈与を行った場合、目的財産が後継者と他の者との共有となり、円滑な事業承継が困難となるなどの問題がありました。また、共有持分が複雑化し、持分権の処分に支障が生じるおそれがあるとの問題も指摘されていました。つまり、「被相続人の財産処分の自由」と「遺留分権利者の保護」との調和を図るという遺留分制度の根拠に反するという問題が生じていました。

そこで、改正民法では、遺留分を侵害する遺贈等の効力を維持することを前提としたうえで、遺留分権利者は、遺贈等を受けた者に対して遺留分侵害額に相当する金銭を請求する権利が発生すると構成し直しました。この請求権については、「遺留分侵害額請求権」と定義されました。

遺留分の算定方法の明確化

改正前の民法では、規定上、遺留分の算定が不明瞭であるとされており、また、具体的な遺留分侵害額の算定方法は明文化されていなかったため、実務上は、判例の積み重ねによる解釈に委ねられていました。

例えば、相続人に対する生前贈与については、贈与の時期を問わず、特別受益に該当するのであれば、すべて、遺留分算定の対象とされていました。

本改正によって、相続人に対する生前贈与については、「原則として、相続開始前10年以内に行われたもの」が遺留分算定の基礎とされましたので、自社株式や事業用資産については早期に贈与することにより、事業承継が円滑に行われることが想定されています。【円滑な事業承継に関しては、後継者および先代経営者の推定相続人全員の合意が必要とはなりますが、経営承継円滑化法に規定する「除外合意」、「固定合意」といった制度を利用することにより、不測の遺留分侵害額請求を回避することも可能です。】

前回も触れましたが、以下が、「遺留分を算定するための財産の価額」の計算式となります。この価額に相対的遺留分率(相続人が直系尊属のみの場合は1/3、それ以外の場合は1/2)、法定相続分を乗じた金額が各人の遺留分となります。

生前贈与の価額とは

相続人に対する贈与  ・・・原則として、相続開始前10年以内に行われたもの

相続人以外に対する贈与・・・原則として、相続開始前1年以内に行われたもの

※遺留分を算定したのちに各人の遺留分侵害額を算定することとなりますが、遺留分侵害額の算定は少し複雑な計算となりますので、本ブログにおいては割愛させていただきます。各人の遺留分から各人が①実際に生前贈与を受けた金額がある場合、②相続財産のうち取得する金額がある場合には、それらの金額を控除する等により算出します。この場合の生前贈与については、期間は制限されておりません。

税法との関係

遺留分に関する規定が物権的効果から金銭請求権へと変化しましたが、権利行使によって生ずる担税力の増減は、改正前と同様と考えられることから、税法上は、「遺留分による減殺の請求」という文言が「遺留分侵害額の請求」と改正されたことに伴う所要の整備のみ行われました。

従前、遺留分の権利行使をされたことにより、財産を返還することとなった者は、更正の請求が認められていましたが、改正後も変更はありません。

ただし、遺留分の性質が金銭請求権とされ、金銭での支払が強制化されたことから、金銭の支払に代えて、資産の移転(いわゆる代物弁済)を行った場合には、その履行があったときに履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととされ、譲渡所得課税が行われることとなった点に留意が必要です。

また、相続税の計算の際に加算される生前贈与は、相続時精算課税の適用を受けた生前贈与のほか、「相続または遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与」です。

相続税計算の際に加算される生前贈与(相続開始前3年以内、相続時精算課税贈与は期間制限なし)、遺留分算定の際に考慮される生前贈与(相続人の場合は原則相続開始前10年以内)、遺留分侵害額、特別受益者の相続分を算定するにあたって持戻される生前贈与(期間制限なし)は、対象財産、加算する財産の価額等に細かい相違点がありますので、こちらも留意が必要となります。

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遺留分の基本的考え方

今回は、民法改正項目の1つである「遺留分」についてご紹介させていただきます。

「遺留分」自体、聞き慣れない言葉かもしれませんが、これまでも存在していた権利です。相続に際して、皆様もお持ちの権利とも言えます。配偶者居住権のように、本改正において新たに創設された項目ではなく、遺留分の性質が見直された点、規定の整備がなされた点が今回の改正点として挙げられます。改正点を簡潔にまとめると、以下となります。

  • 遺留分権利者が有する権利の金銭債権化
  • 遺留分の算定方法の明確化

改正点のご紹介に入る前に、まずは「遺留分」制度の概要について、確認していきます。

遺留分制度の趣旨

遺留分とは、民法上、特段の定義づけがされているわけではありませんが、一般に、被相続人の財産処分の自由と遺留分権利者(いわゆる相続人)の保護との調和を図ることを目的として、兄弟姉妹以外の相続人に保証されている一定の権利の割合ということができます。

例えば、被相続人に配偶者と子供2人(子供Aと子供B)がいる場合において、被相続人が「相続財産のすべてを第三者に遺贈する」という遺言を作成していたとすると、相続財産のすべてが第三者の手に渡ってしまうことになりかねず、相続人の生活保障を図ることができなくなってしまうおそれがあります。

また、上記例示において、被相続人が「相続人の1人(例えば子供A)にすべての財産を遺贈する」といった遺言を作成していた場合においても、遺贈を受けない相続人において同様の問題が生じうることとなります。

そこで、被相続人の財産処分の自由を尊重しつつも、一定の割合部分については、相続人に留保すべき権利を認めようというところに、この遺留分制度の根拠が置かれています。

遺留分権利者

遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人とされています。つまり、被相続人の配偶者、子、直系尊属が遺留分を主張しうる者です。子が死亡している場合は、代襲相続人である孫が遺留分権利者となり、被代襲者である子と同じ遺留分を有します。

法定相続人

ここで、民法が定める「相続人」の規定について確認していくこととします。

被相続人の子は相続人となります。被相続人の子が相続の開始以前に死亡等している場合には、その者の子(つまり、孫)が代襲して相続人となります。こちらは、第1順位の相続人と言われます。

被相続人に子または代襲相続人である孫がいない場合には、被相続人の直系尊属、被相続人の兄弟姉妹の順に相続人となります。これらは、それぞれ、第2順位、第3順位の相続人と言われます。また、被相続人の配偶者は、常に相続人となります。

法定相続分

つぎに、民法が定める「相続分」の規定について確認していくこととします。同順位の相続人が数人あるとき(つまり、配偶者がご健在の場合)の相続分は以下のとおり規定されています。

  • 子および配偶者が相続人   ・・・それぞれ1/2
  • 配偶者および直系尊属が相続人・・・配偶者2/3、直系尊属1/3
  • 配偶者および兄弟姉妹が相続人・・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

(注)子、直系尊属、兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は等しいものとされます。つまり、配偶者と子が2人いる場合、子はそれぞれ1/4(=1/2×1/2)の相続分を有することとなります。

遺留分の帰属およびその割合

遺留分については、以下の算式により計算されます。

  • 直系尊属のみが相続人の場合・・・「遺留分を算定するための財産の価額」×1/3(×法定相続分)
  • 上記以外の場合      ・・・「遺留分を算定するための財産の価額」×1/2(×法定相続分)

「遺留分を算定するための財産の価額」は、以下の算式により計算されます。

(注)実際の遺留分減殺請求(本改正により、「遺留分侵害額請求」)の金額は、上記算式に基づき算定した遺留分をベースに、遺留分権利者が受けた生前贈与等があれば、その額を控除する等により計算し、なお不足額がある場合のその不足額とされます。

直系尊属が第2順位の相続人となることは、先に触れました。したがいまして、「直系尊属のみが相続人」の場合とは、被相続人に配偶者および子(子が死亡している場合には代襲相続人である孫)のいずれもが存在しないケースとなります。

したがいまして、「上記以外」の場合とは、具体的には、相続人が、①子(代襲相続人である孫)および配偶者、②配偶者および直系尊属、③配偶者および兄弟姉妹、④子(代襲相続人である孫)のみ、⑤配偶者のみの場合が想定されます。ただし、③の場合において、兄弟姉妹には遺留分は認められません。

相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者は1/4(=1/2×1/2)、子はそれぞれ1/8(=1/2×1/2×1/2)の遺留分を有するとされます。相続人が配偶者と直系尊属2人の場合の遺留分は、配偶者が1/3(=1/2×2/3)、直系尊属はそれぞれ1/12(=1/2×1/3×1/2)です。相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合の遺留分は、配偶者が1/2、兄弟姉妹はゼロとなります。

以上が、遺留分の概要についての要点整理となります。長くなりましたので、次回以降、民法改正点の内容および税法との関係についてご紹介させていただきます。

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配偶者居住権~税法上の評価(土地編)

今回は、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権(いわゆる土地部分)の税法上の評価について、ご説明させていただきます。

考え方は前回投稿した家屋の評価とほぼ同様となりますので、相続税法で定める評価方法を計算式で見ていきます。家屋の評価につきましては、以下をご参照ください。

上記計算式のとおり、家屋の場合の計算と違って、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権の評価はいたってシンプルです。

理論的には、計算式後半部分の割戻計算における「時価」は、「配偶者居住権の存続期間満了時における時価」を採用すべきこととなりますが、将来的な「時価」の算定には不確実性を伴う等の理由から、時価変動を捨象し、「相続開始時における時価」を採用することとされています。

前回同様、計算事例を見ていきます。

具体的な計算事例

-前提事項(青字箇所のみ追加)

敷地利用権の価額【配偶者が取得する相続財産】

50,000,000 円−50,000,000 円×0.554=22,300,000 円

居住建物の敷地の価額【⻑男が取得する相続財産(差引計算)】

50,000,000 円−22,300,000 円=27,700,000 円

※ 上記前提に基づいた場合、土地の評価の44.6%が敷地利用権として評価されることとなります。

前回計算した家屋同様、上記事例において、遺産分割確定時の配偶者の年齢が80歳とすると以下の計算となります。

敷地利用権の価額【配偶者が取得する相続財産】

50,000,000円-50,000,000円××0.701=14,950,000円

居住建物の敷地の価額【長男が取得する相続財産(差引計算)】

50,000,000円-14,950,000円=35,050,000円

※ 上記前提に基づいた場合、土地の評価の29.9%が敷地利用権として評価されることとなります。家屋同様、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権についても、配偶者の年齢が若ければ若いほど、評価額が大きくなることがわかります。

考察

配偶者居住権、敷地利用権ともに、配偶者が死亡した場合に消滅するとされていますので、二次相続の際には、相続財産として課税されません。つまり、配偶者の年齢が60歳だった場合の配偶者居住権の評価額18,554,783円と敷地利用権の評価額22,300,000円の合計額40,854,783円は、被相続人が死亡した一次相続においては相続財産とされますが、配偶者の税額軽減の範囲内であれば、相続税の負担がないまま配偶者に権利を移転することができますし、配偶者の二次相続の際には、無条件で相続税の負担がないまま所有者(本ケースにおける長男)に権利移転できます。ゆえに、配偶者居住権の設定は相続対策として有効となりうることがうかがえます。

しかしながら、ここで一点、考慮しなければならないのは、小規模宅地の特例規定の併用となります。小規模宅地の特例規定は、要件を満たせば、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権についても、敷地所有権についても適用可能です。330㎡という面積制限の範囲内であれば、評価額を80%減額できます。

配偶者は無条件に小規模宅地の特例の適用を受けることができますので、特段問題とされることはありませんが、配偶者以外の親族については、配偶者がご存命であれば、被相続人との「同居」が要件とされます。

一般的には、配偶者居住権の設定は相続対策として有効と考えられますが、一次相続において家屋と敷地の所有権を取得することとなる者(本ケースにおける長男)が小規模宅地の特例の適用を受けられない場合には、一次相続時においては、家屋と土地の所有権を配偶者が取得し、二次相続時において長男が小規模宅地の特例の適用を受けられるように要件を整えておくことも採りうる選択肢と考えられます。

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配偶者居住権~税法上の評価(家屋編)

今回は、配偶者居住権(家屋)の税法上の評価について、ご説明させていただきます。

配偶者居住権の評価の基本的な考え方は、以下のとおりです。

※1 「相続開始時における居住建物の価額」は、一般に固定資産税評価額とされますので、特段計算が複雑となるわけではありません。(一部が賃貸されている場合、配偶者との共有とされている場合は按分計算が必要です。)

※2 計算上複雑となるのは、「期間満了時における居住建物の相続開始時における現在価値」の算出です。相続税法上の評価としては、相続開始時における居住建物の価額をベースに、期間満了時までの減価の額を控除した未償却残高について法定利率による複利計算で現在価値に割り戻す方法が法定化されています。

具体的な計算方法としては、以下の方法がとられます。

※1 耐用年数・・・居住建物の全部が「住宅用」であるとした場合における耐用年数省令に定める耐用年数に1.5を乗じて計算した年数

※2 経過年数・・・居住建物の新築時から配偶者居住権設定時までの年数

※3 存続年数・・・配偶者居住権が存続する年数(厚労省が公表する完全生命表に基づく平均余命)

※4 存続年数に応じた法定利率による複利現価率・・・1÷(1+r)

     r・・・法定利率(2020年4月1日以後は3%。3年に1度見直しあり。)

     n・・・配偶者居住権の存続年数

配偶者居住権の評価については、配偶者居住権が存続する期間中に受ける想定賃料を基礎として価額を算出するというアプローチも考えられます。実際に、遺産分割の場においては、このような方法により算出した価額に基づいて配偶者居住権を設定することも可能です。しかしながら、相続税の計算においては、あくまで法定評価に基づいて算出することとされました。これは、恣意性の排除、課税の公平性の担保を目的としています。

具体的な計算事例

前提事項

配偶者居住権の価額【配偶者が取得する相続財産】

20,000,000円-20,000,000円×(33年-10年-20年)/(33年-10年)×0.554=18,554,783円

居住建物の価額【長男が取得する相続財産(差引計算)】

20,000,000円-18,554,783円=1,445,217円

※ 上記前提に基づいた場合、家屋の評価の約92.8%が配偶者居住権として評価されることとなります。

-前提事項②

上記事例において、遺産分割確定時の配偶者の年齢が80歳とすると、平均余命は12年複利現価率は0.701となり、以下の計算となります。

配偶者居住権の価額【配偶者が取得する相続財産】

20,000,000円-20,000,000円×(33年-10年-12年)/(33年-10年)×0.701=13,294,783円

居住建物の価額【長男が取得する相続財産(差引計算)】

20,000,000円-13,294,783円=6,705,217円

※ 上記前提に基づいた場合、家屋の評価の約66.5%が配偶者居住権として評価されることとなります。

上記結果のとおり、配偶者居住権は、配偶者の年齢が若ければ若いほど、評価額も大きくなります。家屋の評価額がすべて配偶者居住権とされることも起こりえます。これは、若い方ほど長く住み続けることが想定されている(所有者である長男の使用収益が制限される)ことを根拠とします。

次回は、配偶者居住権が設定された土地(敷地)の評価について、触れていきたいと思います。

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配偶者居住権~民法上の取扱いを中心に~

今回より、民法改正によって創設された「配偶者居住権」の取扱いについてご紹介させていただきます。配偶者居住権に関する民法の規定はいくつかありますが、本ブログにおいては、相続実務のうえで基本となる「配偶者居住権の成立要件」、「配偶者居住権の存続期間、消滅」の規定ついて、ご紹介させていただきます。

配偶者居住権の成立要件(民法第1028条)

相続開始時に被相続人が建物を所有していたこと

当該建物が配偶者以外の者との共有物である場合は配偶者居住権の設定はできません。これは、もともと権利を有する共有者の所有権を侵害することとなるためとされています。

相続開始時に配偶者が建物に居住していたこと

被相続人との「同居」までは要件とされていません。あくまで「居住」です。

配偶者居住権が遺産分割または遺贈で認められること

別途、民法第1029条において家庭裁判所の審判による設定も認められています。

配偶者居住権を設定した場合、被相続人が所有していた家屋は①配偶者居住権と②配偶者居住権が設定された居住家屋の所有権に、土地は①配偶者居住権に基づく居住家屋の敷地使用権と②配偶者居住権が設定された居住家屋の敷地所有権に区分され、それぞれ配偶者と他の相続人が取得することとなります。

配偶者居住権の存続期間、消滅(民法第1030条、1036条)

配偶者居住権の存続期間は、原則として、配偶者の終身の間とされています。また、配偶者が死亡したときは、配偶者居住権は消滅するとされています。当然のことながら、敷地使用権も消滅します。

税務上も、民法上の規定を受け、配偶者が死亡した場合の二次相続において、配偶者から居住建物の所有者に対して配偶者の相続を原因として移転する財産はないとされます。つまり、二次相続時に相続税の課税関係は生じません。

実務上の検討

配偶者居住権の検討にあたり、まずは建物の所有者要件、居住者要件において不備がないかを確認する必要があります。建物の名義が、被相続人(父)と相続人(子)の共有とされている場合、配偶者居住権の設定はできませんので、事前に名義の見直しをされたほうが良いケースもありうると考えられます。

配偶者居住権の設定は、配偶者自身の二次相続も踏まえると、大きな節税対策となることが想定されています。成立要件を満たしていることを条件に、他の相続財産とのバランスも考慮して配偶者居住権の設定が有利に働くかどうか詳細に検討する必要があると考えられます。

次回は、「配偶者居住権」の設定により、相続税の評価上、どれほどのインパクトが生じるのか、計算事例を用いながら、ご紹介させていただきます。

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ご挨拶

この度、ホームページの開設に伴い、ブログを始めることといたしました。気になるトピックがあれば、随時、情報発信させていただきたいと思います。

基本的には、税務情報中心のスタンスとさせていただきます。たまに趣味のネタもでてくるかもしれませんが、素性がばれてしまう恐れもありますので、、基本的には税務ネタ中心となります。更新は不定期です。やけに更新していたら暇だと思って、どんどん仕事を回してください。よろしくお願いいたします。(更新が滞っていたら、、察してください。)

さて、何の税目から情報発信していこうかというと迷うところもありますが、しばらくの間は、民法改正により影響を受ける相続実務について進めていきたいと思います。

それでは、今後とも、よろしくお願いいたします。

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