配偶者居住権~税法上の評価(土地編)

今回は、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権(いわゆる土地部分)の税法上の評価について、ご説明させていただきます。

考え方は前回投稿した家屋の評価とほぼ同様となりますので、相続税法で定める評価方法を計算式で見ていきます。家屋の評価につきましては、以下をご参照ください。

上記計算式のとおり、家屋の場合の計算と違って、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権の評価はいたってシンプルです。

理論的には、計算式後半部分の割戻計算における「時価」は、「配偶者居住権の存続期間満了時における時価」を採用すべきこととなりますが、将来的な「時価」の算定には不確実性を伴う等の理由から、時価変動を捨象し、「相続開始時における時価」を採用することとされています。

前回同様、計算事例を見ていきます。

具体的な計算事例

-前提事項(青字箇所のみ追加)

敷地利用権の価額【配偶者が取得する相続財産】

50,000,000 円−50,000,000 円×0.554=22,300,000 円

居住建物の敷地の価額【⻑男が取得する相続財産(差引計算)】

50,000,000 円−22,300,000 円=27,700,000 円

※ 上記前提に基づいた場合、土地の評価の44.6%が敷地利用権として評価されることとなります。

前回計算した家屋同様、上記事例において、遺産分割確定時の配偶者の年齢が80歳とすると以下の計算となります。

敷地利用権の価額【配偶者が取得する相続財産】

50,000,000円-50,000,000円××0.701=14,950,000円

居住建物の敷地の価額【長男が取得する相続財産(差引計算)】

50,000,000円-14,950,000円=35,050,000円

※ 上記前提に基づいた場合、土地の評価の29.9%が敷地利用権として評価されることとなります。家屋同様、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権についても、配偶者の年齢が若ければ若いほど、評価額が大きくなることがわかります。

考察

配偶者居住権、敷地利用権ともに、配偶者が死亡した場合に消滅するとされていますので、二次相続の際には、相続財産として課税されません。つまり、配偶者の年齢が60歳だった場合の配偶者居住権の評価額18,554,783円と敷地利用権の評価額22,300,000円の合計額40,854,783円は、被相続人が死亡した一次相続においては相続財産とされますが、配偶者の税額軽減の範囲内であれば、相続税の負担がないまま配偶者に権利を移転することができますし、配偶者の二次相続の際には、無条件で相続税の負担がないまま所有者(本ケースにおける長男)に権利移転できます。ゆえに、配偶者居住権の設定は相続対策として有効となりうることがうかがえます。

しかしながら、ここで一点、考慮しなければならないのは、小規模宅地の特例規定の併用となります。小規模宅地の特例規定は、要件を満たせば、配偶者居住権の設定に基づく敷地利用権についても、敷地所有権についても適用可能です。330㎡という面積制限の範囲内であれば、評価額を80%減額できます。

配偶者は無条件に小規模宅地の特例の適用を受けることができますので、特段問題とされることはありませんが、配偶者以外の親族については、配偶者がご存命であれば、被相続人との「同居」が要件とされます。

一般的には、配偶者居住権の設定は相続対策として有効と考えられますが、一次相続において家屋と敷地の所有権を取得することとなる者(本ケースにおける長男)が小規模宅地の特例の適用を受けられない場合には、一次相続時においては、家屋と土地の所有権を配偶者が取得し、二次相続時において長男が小規模宅地の特例の適用を受けられるように要件を整えておくことも採りうる選択肢と考えられます。

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